2023/12/20の記事「育児休業制度の概要について」では、育児休業を取得できる回数や条件、育児休業期間中の就労等、制度の内容を主にご説明させていただきました。これらはもちろん遵守していただく必要があるのですが、令和4年4月以降の改正ではこれに加え「育児休業制度を従業員が取得しやすくする環境整備を行うこと」も続々と義務化されております。
こで今回の記事では、企業として行わなければならない育児休業制度取得のための環境整備についてご説明いたします。具体的には、以下の2つを行うことが必要です。
1.事業主が講じるべき義務
事業主は、労働者が育児休業の申し出を円滑に行えるようにするため、以下のいずれかの措置を講じる義務があります。また、可能な限り複数実施することが望ましい、とされています。
- 育児休業に関する研修の実施
- 対象は全労働者が望ましいですが、少なくとも管理職は研修を受けたことがある状態にする必要があります。
- 育児休業に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
- 設ける窓口は、形式的なものではなく、実質的な対応が可能な窓口を設けるとともに、従業員に窓口設置について周知することが必要です。
- 自社の労働者の育児休業取得事例の収集・提供
- 自社の育児休業事例を収集し、事例を掲載した書類の配布やイントラネットへの掲載等を行い、労働者が閲覧できるような状態にする必要があります。
- 自社の労働者へ育児休業制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
- 育児休業に関する制度と育児休業の取得の促進に関する事業主の方針を記載したもの(ポスター等)を事業所やイントラネット上に掲載してください。
2.以下のすべての内容は周知と確認を行う義務があります
本人および配偶者が妊娠や出産したことを申し出た労働者に対し、以下のすべての内容にて個別の周知と休業の取得意向の確認を行う義務があります。なお、育児休業の取得を控えさせるような形での周知や意向確認は、これらの措置を行ったものとは認められませんのでご注意ください。
(周知すべき事項)
- 育児休業に関する制度(制度の内容など)
- 育児休業の申し出先(例:「人事部」「総務部」など)
- 育児休業給付に関すること(給付制度の内容など)
- 労働者が育児休業期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
(周知時期)
- 妊娠・出産の申出が出産予定日の1か月半以上前に行われた場合
- 出産予定日の1か月前まで
- 予定日の1か月前までに申出があった場合
- 予定日の2週間前まで
- 予定日の1か月前~2週間前の間に申出があった場合
- 予定日の1週間前まで
- それ以降に申出があった場合
- できるだけ速やかに
(周知方法)
- 面談(オンラインも可)、書面交付を原則とし、労働者が希望した場合は、FAXや電子メールでの周知も可能。
- なお、1,2にて言及している「育児休業」には、いわゆる「産後パパ育休制度」も含みますのでご注意ください。
まとめ
以上、育児休業制度の取得に伴う環境整備についてご説明です。繰り返しになりますが、当該取り組みは令和4年4月以降、企業が行うべき義務となっておりますので、対応に漏れがないようお気をつけいただければと存じます。