労働条件明示のルール変更について(詳細説明)

労働者と労働契約を結ぶ際においては、「労働基準法」において、一定の項目を明示しなければならない、と定められていることは周知のとおりかと存じます。

そして、当該項目の具体的内容については、「労働基準法施行規則」「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」という決まりにおいて定められているのですが、2024年4月よりこれらが改正され、労働者に明示しなければならない項目が増加することとなっております。

そこで今回の記事では、2023年7月25日の記事においても概要をご説明してはおりますが、2024年4月以降に追加される、労働条件明示の新しいルールについてもう一度詳しく解説させていただきます。当該記事文末に厚生労働省発行のパンフレット等を掲載させていただきますので、当解説とともに併せてご覧になっていただければと思います。

1.就業場所・業務の変更の範囲(すべての労働者が対象)

2024年4月以降に締結・更新される労働契約において、「就業場所と業務の変更の範囲」を明示することが義務となりました。「就業場所と業務」とは、労働者が通常就業されることが想定されている就業の場所・業務を指し、「変更の範囲」とは、当該労働契約の期間内における就業場所や業務の変更の範囲(見込み含む)を指します。以下に明示方法の一例を記します。

  1. 就業場所・業務に限定がない場合
    • 就業場所:(雇入れ直後)東京本社 (変更の範囲)会社が定める場所
    • 従事すべき業務:(雇入れ直後)広告営業 (変更の範囲)会社内でのすべての業務
  2. 就業場所・業務の一部に限定がある場合
    • 就業場所:(雇入れ直後)東京本社 (変更の範囲)関東圏内にある支社
    • 従事すべき業務:(雇入れ直後)商品企画 (変更の範囲)本社・関東圏支社における商品企画業務

2.更新上限に関する事項(有期契約労働者が対象)

こちらも2024年4月以降に締結・更新される有期労働契約(契約社員、パートアルバイト等)において、更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)がある場合にはその明示が必要となります。例えば「通算契約期間の上限は2年間とする」や「契約更新の回数は3回を上限とする」といった明示が考えられます。

なお注意していただきたいのは、これまで上限がなかったのに新たに設けようとする場合においては、設ける前のタイミングであらかじめ上限を設定する理由や背景を労働者に説明することが必要、ということです。

事前説明もなくいきなり明示するということは認められないだけではなく、トラブルや紛争の原因ともなりかねませんので、慎重に進めるようにしましょう。

3.無期転換申込機会(無期転換申込権が発生する有期契約労働者が対象)

労働契約法第18条において、同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えて繰り返し更新された場合は、労働者の申込みにより無期労働契約に転換するというルールが定められております。本改正においては、当該申し込み権が発生する労働者に対しては、その労働契約更新タイミングごとに、該当する有期労働契約の始期から終期までの間、無期転換を申し込むことができる旨の明示を行うことが義務となりました。

例えば、1年契約の有期労働契約を5回更新した場合、5回目の契約更新(=6年目の契約締結)タイミング以降において本項目を明示する必要がありますし、3年契約であれば、最初の契約更新タイミング以降において明示する必要があります。

4.無期転換後の労働条件(無期転換申込権が発生する有期契約労働者が対象)

3を明示しなければならない有期契約労働者については、併せて無期転換後の労働条件についても明示することが必要です。明示方法については、事項ごとに明示するほか、有期労働契約の労働条件と無期転換後の労働条件との変更の有無、変更がある場合はその内容を明示する方法でも差し支えありません。

例えば変更がない場合は「無期転換後の労働条件は本契約と同じ」、変更ある場合は「無期転換後は、労働時間を〇〇、賃金を〇〇に変更する」といった記載が考えられます。

また併せて「均衡を考慮した事項の説明」に努めることも必要となります。具体的には、無期転換後の労働条件を定めるにあたり、ほかの正社員や無期雇用フルタイム労働者との均衡を考慮したこと、例えば「正社員と比較すると、無期雇用となったあなたの業務は〇〇の点で正社員より責任が軽いため、このような給与水準にしています」などといった説明をすることで、無期転換後の労働条件に対する理解を深めるようにしていただくことが大切です。

まとめ

以上、2024年4月より適用される労働条件明示のルール変更についてご説明しました。繰り返しとなりますが、これらの新ルールは2024年4月以降に締結・更新される労働契約が対象となります(逆に言えば、2024年3月以前に既に締結済の労働契約の結び直しまでは必要ありません)。

なお言うまでもないことかとは存じますが、無期転換ルールの適用を免れる意図をもって、無期転換申込権が発生する前の雇止め契約期間中の解雇を行うことは、労働契約法の趣旨に反するものとなりますので、注意しましょう。

厚生労働省ホームページ(パンフレットやQ&Aの記載があります)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html

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