腰痛を発症した社員について

労災保険(労働者災害補償保険)についても日々多くのお問い合わせを頂戴しております。その中で特に目立つのは、「従業員が腰痛を発症したと言っているのだが、労災保険の適用になるのか?」というお問い合わせです。

筆者自身もよく腰痛に悩まされますので、この問いはある意味において切実かと実感しております。そこで今回は、腰痛症についての労災保険適用についてお話しをさせてください。

まず心がけていただきたいのは、従業員の方から腰痛による労災申請の希望があった場合においては、当該申し出をいったんは認めて、請求書類を作成いただきたいということです。請求書の事業主証明欄は、事業主が労災と認めたというわけではなく、あくまで事実の有無の確認に過ぎないからです。

当該腰痛症が労災であるか、の最終的な判断はあくまで労働基準監督署長がおこなうものです。事業主証明欄には事実のみを記載すればOKです。

 なお、当該腰痛症が業務上のものとして判断されるかどうかは、厚生労働省より具体的な基準が公開されておりますので、以下に概要をまとめました。この基準に該当する場合、原則として労災適用となります。

1.災害上の原因による腰痛

例えば、重い荷物を運んでいる際に転倒して腰部に急激な負荷が加わってしまった場合や、荷物が予想に反して重く、結果として姿勢が不適切なものになってしまった結果腰部に異常に力が作用した場合など、急激な力の作用により内部組織(筋肉、じん帯など)に損傷が起きてしまった場合。

2. 災害性の原因によらない腰痛

こちらについては、おおむね以下の2つの態様が想定されています。

  • 腰部に過度の負担がかかる業務に比較的短期間(概ね3か月から数年以内)従事する労働者に発症した腰痛。例えば、長時間にわたって腰部の伸展を行うことができない同一作業姿勢を持続して行う業務などが該当します。
  • 重量物を取扱う業務または腰部に過度の負担のかかる作業態様の業務に相当長期間(概ね10年以上)にわたり継続して従事する労働者に発症した慢性的な腰痛。例えば、概ね20kg以上の重量物を労働時間の半分程度以上取り扱う業務などが該当します。

 なお、上記のような場合に該当しない腰痛症については、仮に業務中に発症したものであっても、原則として労災とは認められないこととなります。ただし、腰痛の原因となる傷病は多岐にわたりますし、従業員本人の身体的素因や基礎疾患、作業従事歴も勘案すると、文字通りひとつとして同じ状況の腰痛症はないかと存じますので、一概には判断できない部分も残ります。

繰り返しとなりますが、労災適用になるかどうかは労働基準監督署長の判断となりますので、事業主の判断で労災申請する・しないを決めてしまうことのないようにしてください。

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