前回のコラムで、「財務諸表の適正性と労務の関係」についてすこし触れました。今回は「労働時間の管理」についてお伝えさせてください。
労働時間とは
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。また、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たります。
研修や訓練の時間の取り扱い
参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間は労働時間に該当することになります。
労働時間の原則的な記録方法について
使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録することとされています。原則的な方法は下記のとおりとなります。
- 使用者が、自ら現認することにより確認すること
- タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として 確認し、適正に記録すること
やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合について
- 自己申告を行う労働者や、労働時間を管理する者に対しても自己申告制の適正な運用等ガイドラインに基づく措置等について、十分な説明を行うこと
- 自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること
- 使用者は労働者が自己申告できる時間数の上限を設ける等適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならないこと。さらに36協定の延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、労働者等において慣習的に行われていないか確認すること
タイムカードの打刻時間=労働時間?
ガイドラインでは、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基本情報とし、必要に応じて、例えば使用者の残業命令書及びこれに対する報告書など、使用者が労働者の労働時間を算出するために有している記録とを突き合わせることにより確認し、記録して下さい。」とあります。
したがって、タイムカードや勤怠システムで記録した労働時間が、必ずしも正確な労働時間であるということにはなりません。
仕事が終わって、同僚と私語をして過ごした時間。休憩室でコーヒーを飲んでいる時間などは労働時間に当たりません。ゆえにそういった時間を過ごした後に打刻した労働時間は、正しい労働時間とは言えません。
まとめ:実際の労務デューデリジェンスでは何をみる?
タイムカードの運用実績の外で、代表的なものでは
- パソコンのシステムログファイル
- 警備会社の施錠記録
などを拝見します。
それぞれの時間との整合性をみて、労働時間が正しく把握されているかを検討します。
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