令和10年雇用保険法改正について(被保険者要件の緩和)

先日、令和7年における雇用保険法改正において、新たな給付金が創設されるというご説明をいたしましたが、この3年後、令和10(2028)年10月には、雇用保険法の在り方を大きく変える大改正がなされることが確定いたしました。

具体的には、労働者が雇用保険に加入しなければならない要件を大きく引き下げる「被保険者要件の緩和」がなされるのですが、今回の記事ではその件について詳しくご説明いたします。

1.現行の雇用保険法について

 雇用保険は、国が管掌し、強制加入制度をとっています。すなわち、労働者を雇用する事業であれば、事業主の意思や業種規模には関係なく、すべてが適用事業となるのが原則です(雇用保険法第5条1項)。

 そして、雇用保険の適用事業の事業主に雇用されている労働者は、原則としてその者の意思にかかわらず、法律上当然に被保険者となります(雇用保険法第4条1項)が、一部適用除外要件があり、「1週間の所定労働時間が20時間未満である者」については、雇用保険の適用から除外されております(雇用保険法第6条1項1号)。

つまり現状では、週20時間以上働いていない方については、雇用保険の加入対象外ということになっております。

2.令和10年雇用保険法改正について

令和10年における雇用保険法改正では、この「週20時間以上」の部分が「週10時間以上」に変更されることとなりました。この背景には、週20時間未満で就労している短時間労働者の増加があります。国の資料※1 によると、週の就業時間が20時間未満の労働者の数は、2013年では494万人であったのが2023年には734万人と、10年間でおよそ1.5倍に増加しています。

またその男女比※2を見ると、女性が7割以上を占めている状況です。これと歩調を合わせるように、妻がパートタイム勤務である世帯の数※2も2022年では696万世帯と、専業主婦世帯の430万世帯、夫婦ともフルタイムの496万世帯を大きく超えております。

 このような社会情勢を見据え、これまで雇用保険の適用外とされてきた「週20時間未満」の労働者(特に女性)についてもセーフティーネットを拡大すべきではないか、という判断が今回の法改正の背景にあるようです。

3.実務への影響

 実務への影響で最も大きいのは、やはり雇用保険の資格取得・喪失(離職票)手続の増加と思われます。これまで雇用保険の手続きが必要なかった短時間勤務者についても手続しなければならなくなることから、人事・総務部門の業務量増加が懸念されます。

特に離職票については、雇用保険対象者拡大に伴い、被保険者期間の算定基準や失業認定基準も変更となりますので、併せて押さえておく必要があります。この点はまた項を改めてご説明できればと思います。

また、雇用保険料の負担は労使で分担しますので、雇用保険加入者が増えれば、それだけ事業所の雇用保険料負担も増加します。現行の雇用保険料率はそこまで高いものではありません(一般事業で1000分の15.5。うち企業負担分は1000分の9.5)が、短時間労働者が多い事業所では無視できないインパクトがあるかと思われます。

 以上、令和10年における雇用保険改正(適用対象者の拡大)についてご説明いたしました。改正まではまだ時間がありますので、実務へ及ぼす影響についてしっかりとシミュレーションし、準備しておきたいですね。

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