先日の記事でご説明した通り、雇入れの日から6ケ月継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者については年次有給休暇を付与しなければなりません。しかしながら、従業員が増えてくると、従業員ごとにバラバラな入社日や基準日(=年次有給休暇を付与する日)を管理することへのコストが増大してしまいますので、全労働者について一定の基準日を設け、その基準日までの勤続年数および出勤率により有給休暇日数を算定することも認められています。これを「年次有給休暇の斉一的取り扱い」といいます。今回はこの点についてご説明いたします。
有給休暇発生条件
例として、4月1日を基準日とした場合を考えてみます。12月1日に入社したAさん(正社員)という方がいた場合、Aさんは本来であれば5月31日まで継続勤務し、かつその間の出勤率が8割以上であって初めて、6月1日に年次有給休暇が付与されることとなります。
しかし基準日が4月1日に統一されておりますので、Aさんにも4月1日に有給休暇が付与されることになります。なおこの場合、基準日以降である残余の期間、Aさんの場合であれば4月1日から5月31日までの期間は、すべて「出勤した」とみなして計算する必要があります。
付与日数にも注意
付与日数にも注意が必要です。仮に付与日数を按分計算し、4月1日の時点でAさんに7日(10×4/6=6.6666)付与するとした場合を考えてみると、この時点では法令が定める基準(6か月経過時に10日付与)を上回って年次有給休暇を付与しているため適法ですが、6月1日になった時点で3日を加えて付与しなければ、労働基準法違反となってしまいます。こういった按分付与は逆に管理が煩雑となり、斉一的取り扱いの趣旨から外れてしまう恐れもあります。
そのため、このケースでは、シンプルなやり方として以下の方法が考えられます。
- 4月1日~9月30日入社の者には入社時点で10日付与する。
- 10月1日以降入社の者には、入社月に従って付与日数を按分する。(例えば10月入社者は入社時に5日、11月入社者は4日、12月入社者は3日・・・)
- 次年度の4月1日に、前年度入社者に対し一斉に11日を付与する。
このようにすれば、法令の定める基準を下回ることなく、管理を簡単にすることができます。もっとも、この場合では3月入社者については入社してすぐ次の月に11日付与されることとなってしまいますが、これは事務簡素化のための一時的負担として割り切っていただくしかありません。
以上、有給休暇の斉一的取り扱いについてご説明いたしました。重要なのは、労働基準法が定める基準を下回らないようにしていただくこととなりますので、ご注意ください。