厚生労働省「令和4年版 働く女性の実情」によれば、2022(令和4)年における女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)は44.9%となり、昭和60年以降過去最高を記録しています。
また、女性の年齢階級別就業状況を見ても、かつて「M字カーブ」と言われていた子育て世代における就業率減少はほぼ解消されつつあり、2012(平成24)年と比較すると、すべての年齢階級で労働力率は上昇しています。これに一役買っていると思われるのが、1991(平成3)年に制定されて以降、制度の拡充が進められている育児休業制度です。
本制度は昨年(令和4年)においても重要な改正がなされておりますので、今回はこの育児休業制度について、大まかな概要をご説明したいと思います
1.そもそも育児休業ってなに?
育児休業とは、「労働者が原則としてその1歳に満たない子を養育するためにする休業」と定義されています。そのため、育児休業できるのは原則として子どもが1歳になるまでの間となりますが、保育園に入園できない等の理由があれば、半年スパンで最大子どもが2歳になるまで延長ができます。
また対象となる労働者も、正社員に限られず、有期雇用労働者やパートさんも条件を満たせば取得できます(条件については3で後述します)
2.育児休業を取得できる回数
育児休業を取得できる回数は「1人の子につき2回まで」が原則となります。そのため1人の子について何回にも分けて取得することはできなく、1人の労働者について回数を制限することもできません。例えば、1人の子について細切れに3回以上取得することは原則できず、1人の労働者につき子が3人以上いるのに2回までに制限する、といったこともできません。
ただし配偶者が病気になってしまった等、特別の事情があれば、1人の子における回数制限はこの限りではありません。
また1にてご説明した保育園に入れなかった等の理由で休業を延長した場合、その延長した休業は、延長前の休業とは別物とみなされます。要するに、1歳までの育児休業で2回まで取得でき、1歳以降の育児休業はそれとはまた別に取得できるということです。
3.取得できる条件
正社員であれば原則取得できますが、勤続年数が1年に満たない場合は、労使協定に明記することで対象から除外できます。また有期雇用労働者やパートさんについては、上述の勤続年数1年未満+労使協定のほか、子が1歳6か月を迎えるまでに労働契約期間が満了し更新されないことが明らかである場合なども、対象から除外となります。
なお対象者から除外できる条件については、法定以外のものを付け加えることはできませんのでご注意ください。例えば復職の確約を取得の条件にするなどということは不適当です。
4.育児休業期間中の就労について
基本的に育児休業は「子を養育するための休業」となりますので、就労は突発トラブル対応等、あくまで一時的・例外的なものに限り認められます。しかしながら、令和4年改正にて新たに設けられた「出生時育児休業」(いわゆる「産後パパ育休」)では、一定程度の就労は可能となっています。こちらは次の項目5で詳述いたします。
5. 出生時育児休業(産後パパ育休)とは
令和4年10月より新たに設けられた制度で、その名の通り出産直後(出生後8週間以内)に通算28日まで育児休業を取得できます。この制度においては4でも触れた通り、労使協定を結べば、原則として所定労働日数・所定労働時間の半分まで就労させることが可能です。
ただ就労については本人同意が前提となり、一方的に命令できるわけではありませんのでご注意ください。また、この出生時育児休業と通常の育児休業とは別物とみなされますので、出生時育児休業で2回まで、1歳までの育児休業で2回まで分割して取得が可能です。
育児休業給付の支給日数については両者通算されますので、例えば出生時育児休業を28日取得し引き続き通常の育児休業を取得した場合、おおむね賃金の67%もらえる通常の育児休業期間は152日(180-28)となります。
まとめ
以上、制度の概要についてご説明いたしました。従来の制度に加えて、出生時育児休業制度が加わったことで、制度内容も複雑化しておりますので、労働者からの申し出があった場合にスムーズに対応できるようにしておきたいものです。
なお、今回ご説明した内容はあくまで休業自体についてのものであり、「労働者への制度周知義務等」には触れておりません。また対象となる労働者の除外条件についてもすべてには触れられませんでしたので、これらの点についてはまた改めてご説明いたします。