
第5弾は介護についてご説明します。介護についての改正事項が複数ございますので、本稿でまとめてご紹介いたします。
まずは「介護休暇を取得できる労働者の要件緩和」です。
介護休暇(介護の対象家族1名につき年5日、2名以上の場合は年10日取得できる休暇。介護休業ではありませんのでご注意ください)は、これまで労使協定を結べば「継続雇用6ヶ月未満の労働者」つまり入社したばかりの社員については取得できないとすることが可能でした。
それが今回の改正によって改められ、継続雇用された期間に関わらず、介護休暇を取得することが可能となりました。
次に「介護のためのテレワーク導入」です。
こちらは努力義務にとどまっていますが、対象家族を介護する労働者が、テレワークを選択できるようにするよう努める必要があります。なお、社内にテレワークのできない業種・職種がある場合、対象者を限定することも可能です。
3つ目は「介護離職防止のための雇用環境整備」です。
介護のため仕事をやめてしまう、いわゆる「介護離職」は2023年で7万人強となっており高止まり傾向が続いている中、介護をしながら仕事を続けることを支援するため、事業主は以下①~④のいずれかの措置を最低一つ、できれば複数講ずる必要があります。
これらの措置は、仮に従業員の中に介護に直面している者がいない場合でも実施することが必要です。
- 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
- 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口の設置)
- 自社の労働者への介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
- 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
このうち①研修の実施については、集合研修のような形態でも構わないとされています。
4つ目は「介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認」です。実際に介護に直面した労働者に対して、労働者からの申出を受けた事業主は、以下の事項を個別に周知するとともに、利用の意向を確認しなければなりません。
- 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
- 介護休業・介護両立支援制度等の申し出先
- 介護休業給付金に関すること
これらの事項を、面談・書面交付・FAX・電子メールのいずれかの方法により周知・意向確認を行う必要があります。なお後者二つ(FAX・電子メール)については、労働者からの希望がなければならないとされておりますので、原則としては面談もしくは書面交付のいずれかの方法によることとなります。なお言うまでもありませんが、制度の利用や取得を控えさせるような形での周知は認められません。
5つ目は「介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供」です。
介護に直面していない労働者でも、40歳に達する年度もしくは40歳に達してから1年間の間に、下記の事項について情報提供しなければなりません(上記4つ目でご説明した周知事項と同じ内容になります)
- 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
- 介護休業・介護両立支援制度等の申し出先
- 介護休業給付金に関すること
なお周知の方法については、労働者の希望がなくともFAX・電子メールが利用可能であり、面談・書面交付と併せて4つの中から選んで情報提供を行っていくこととなります。
以上、2025年4月より施行される、介護についての改正事項についてご説明いたしました。特に制度の周知や意向確認等については前広に行っていく必要がありますので、対象労働者のピックアップや周知書式等、事前にご準備をしていただければと思います。
(周知書式については厚生労働省が作成したパンフレットの中にもサンプルがありますので、適宜ご活用いただければと思います。こちらのページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.htmlの『育児・介護休業法 令和6年改正内容の解説』というパンフレットです)