残業時間(時間外労働)の規制について

最近、公共交通機関、特にバス業界における人手不足のニュースが盛んに報じられています。運転士不足により運行本数を減らさざるを得ないケースは、地方のみならず都市部でも発生しており、中にはバス事業自体の廃止にまで追い込まれてしまった例もあります。

バス事業120年 2030年度に運転手3万6000人不足か 背景と今後は(NHKニュース)

主な要因として、バス運転士という仕事の待遇面(拘束時間が長い、給与が他業種と比較して低い、等)があると言われていますが、2024年4月以降この状況はさらに悪化すると予想されています。

なぜなら、それまでは適用が猶予されてきた「時間外労働の上限規制」が、ついにバス事業などの「自動車運転の業務」にも適用されるようになる(※1)ためです。

※1)同じく猶予されてきた業種として「建設事業」「医師」「鹿児島県・沖縄県における砂糖製造業」があるが、これらについても2024年4月より適用となる

これにより、運転士一人ひとりが業務に従事できる時間がこれまでより厳格に制限されるため、更なる人手不足が予想されているのです。なお、これら以外の業種についてはすでに施行されているところではありますが、この「時間外労働の上限規制」のしくみは少々複雑です。

よい機会ですので、ここで一旦振り返ってみます。まとめると、以下の通りとなります。

1.時間外労働は原則月45時間まで、年間360時間まで

例え36協定を結んだとしても、1か月あたりの時間外労働は45時間、年間360時間までが限度となっています。この上限は2にてご説明する「特別条項付き36協定」を締結しなければ、超えることはできません。

2.時間外労働と休日労働との合計が月100時間まで、年間720時間まで(※特別条項付き36協定を結んだ場合のみ)

特別条項付きの36協定を締結した場合については、1でご説明した上限を超えて、月100時間まで、年間720時間までとすることができます。なおこの100時間には、1とは異なり「休日労働」の時間も含むことに注意してください。

そのため、仮に時間外労働が40時間、休日労働が70時間の場合、時間外労働だけで見れば45時間以内に収まっているため特別条項の問題にはなりませんが、合計で110時間となってしまうため法律違反となります。

さらに、時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6回、すなわち6か月だけ。ということにも留意しましょう。年6回を超えてしまうと、その時点で労基法違反となってしまいます。

ただ、この年6回という数字にも注意が必要です。例えば月90時間の時間外労働・休日労働を行った月が2か月連続した場合、回数だと2回しか超えていませんが、これも実は法令違反となってしまいます。この点については3でご説明します。

3.時間外労働と休日労働との合計については、2か月間から6か月間の平均が全て1月あたり80時間以内であること

前述の2でご説明したようなケースだと、2か月平均が90時間となってしまい、80時間を超えてしまっています。法令違反を避けるには、2か月目の時間外労働と休日労働との合計時間を70時間以内に抑えなければならないことになります((90+70)/2=80)。

そのため、時間外労働・休日労働の管理は一か月間ないし一年間という期間のみならず、数か月間というスパンでもしっかり行っていくことが大切となります。

まとめ

以上ご説明したとおり、労働基準法における時間外労働・休日労働の規制は二重三重のフタがかけられており、多くの観点からの管理・チェックが必要な制度となっています。以下に厚生労働省発行のパンフレットを掲載しておきますので、こちらも併せてご覧になってください。

「時間外労働の上限規制 分かりやすい解説」(PDF)

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